アートとサイエンスの関係性
アートとサイエンスの驚くべき
関係性もお伝えしたいと思います。
水と油のような世界と思われがちですな
アートとサイエンスについて、
お互いにどう共鳴させていくかという
事例です。
まずサイエンスから。
ニュートンの万有引力の法則のもとになる
「木からリンゴが落ちた」というエピソードは、
多くの人にとっては既知の話でしょう。
ニュートンは
「そもそもなぜ物体が木から落ちるのだろう」と、
それまで当然と見なされてきた常識を疑うことで
「常識」を「驚くべき新事実」に変換したのです。
コペルニクスの地動説も、
その当時としてはありえない発想でした。
しかし、コペルニクスは何かのきっかけで、
古代ギリシャのピタゴラス派が唱えていた
地動説の事実に気づいた。
さらに、地球が太陽の周りを
周回しているとする仮説に従い、
様々なことを検証していったのです。
その結果、地動説ですべて
証明できることがわかったのです。
実際のところ、一流の科学者の思考回路は、
一流のアーティストのそれと、
とても似ています。
以前、私は、最先端の科学者とアーティストを
引き合わせる会合に出席したことがありましたが、
そこで見た光景は、驚くべきものでした。
一見、直感や感性を活かすアーティストと、
論理とデーターを活かす科学者では、
水と油のような関係に見えますが、
両者はすぐに意気投合したのです。
科学者が言うには、自分たちが普段、
当たり前に考えていることを
どんなに丁寧に話しても、
なかなか一般の人には理解されないが、
アーティストは彼らの思考をすぐに
理解してくれるというのです。
逆に一般的にわかりにくい
アーティストの言葉であっても
科学者には理解できるのも、
両者でイメージを媒介にした
コミュニケーションが存在するからです。
「モナ・リザ」で知られる
レオナルド・ダ・ヴィンチは、
優れた科学者でもありました。
科学とアートには「直感」や
「ひらめき」「ビジョン」といった、
同じような思考が求められ、
それらはイメージを媒介することが多いのです。
アートと科学の親和性が高いという事実は、
アメリカで実際にアートを利用して
科学を視覚的に捉え、
共感してもらえるよう形で伝える試みが
始まっていることからもわかります。
鑑賞者に直感的、
感情的な反応をもたらして、
言葉では説明しきれないアイデアでも
アートを使うことで言葉よりも
正しく伝達できるだけでなく、
記憶にも残りやすいことが
わかったためです。
創造性の研究を専門とする心理学者
ミハイ・チクセントミハイの著書
「クリエイティヴィティ-
フロー体験と創造性の心理学」(世界思想社)
の中に次のような記述を見つけました。
「私たちの多くは、音楽家、作家、詩人、画家、
といった芸術家たちは空想的な側面が強く、
科学者、政治家、経営者たちは現実主義者であると、
当然のように思っている。
日常的な活動に関しては、これが真実かもしれない。
しかし、人が創造的な仕事を始めると、
すべてが白紙に戻ってしまう。
芸術家は物理学者と同じくらい
現実主義者となり、
物理学者は芸術家と同じくらい
創造的になり得るのである」
科学者には芸術家のような
創造的な才能が必要で、
芸術家にもまた科学者のような
現実主義的な視点が必要なのです。
この両方を使えるのが、
真の科学者であり、
真のアーティストであると
言えます。
以上となります。
ビジネスにアートをどのように用いると
利益がだせるのか、ではなく、
アートのどこの部分をビジネスに取り入れたら
イノベーションを生み出せるか、
という考えに重点を置きました。
参考になりましたでしょうか。
それでは、また次回、
お楽しみに。
※参考図書です
著者名「アート思考
ビジネスと芸術で人々の幸福を高める方法」
著者名「秋元 雄史」
出版社「プレジデント社」