欧米の美術館の館長は、MBAを取得している人が多い。「アート思考 ビジネスと芸術で人々の幸福を高める方法」第3回目

みなさん
こんにちわ。

それでは続きを始めます。

 

はたして、
アーティストの感性や価値観を
ビジネスに応用できるのでしょうか?

 

それではどうぞ。

 


 

デザイン思考とアート思考

 

 

ここで、アート思考について考える前に、
まずは、デザイン思考について考えてみます。

まずは、デザイン思考について
考えてみます。

この二つは、
全く異なる手法です。

 

まず、デザイン思考とは何か?
を理解しておきましょう。

デザイン思考とは、
1987年に建築家ピーター・ロウが
その著書「Design Thinking」
(邦題「デザインの思考過程 / 鹿島出版会」)
において、

はじめて著作物のタイトルに採用して
登場したものです。

 

ロウのデザイン思考は、建築家あるいは
都市計画立案者によって利用されてきた
プロセスを

システム思考に基づいて
説明をしようとするものでした。

その後、1980年代から90年代にかけて、
スタンフォード大学教授の
デヴィッド・ケリーらにより、

デザイン思考は

「デザインを通じて
人間の困難な課題を扱うもの」

だとの見解が打ち出され、
ビジネスへの応用が唱えられ始めます。

 

つまりデザイン思考は、

顧客の抱える問題を
解決に導くためのもので

「自分がどうしたいか」ではなく、
「顧客のベネフィット(利益)のために
どうすればよいか」
を考えるものです。

 

この思考は非常に合理的で、
有益であると感じる方も多いと思います。

また、時間を一番大事なものとして捉える
現代に合致した効率的な発想で、

特に製品の改良や改善では
大事な手法です。

しかし、このように考えるとき、
人の思考はより論理的なものになってしまう
ことを忘れてはいけません。

 

論理的であるというのは
大事なことですが、

論理的に考える限りは、
人間の思考や創造には制限がかかり、

イノベーティブな発想は得られない
というジレンマに陥ってしまう
危険性があるからです。

 

 

ジョン・マエダの提言

 

 

デザイン思考がユーザーにとっての
最適解を得るための「課題解決」型の
思考であるのに対して、

アート思考は
「そもそも何が課題なのか」
という問題を作り出し、

「何が問題なのか」といった問いから
始めるのが特徴です。

 

シアトル在住の日系アメリカ人の
グラフィックデザイナーで、

デザインとテクノロジーの
融合を追求する第一人者、

ジョン・マエダがある雑誌の
インタビューに答えた時の言葉が
印象的です。

 

「いま、イノベイションは
デザイン以外のところで生じる必要がある。

それを簡単に言うと、
アートの世界と言うことになる。

デザイナーが生み出すのが
「解決策(答え)」であるのに対し、

 

アーティストが生み出すのは
「問いかけ」である。

 

アーティストとは、
他の人間にとって全く
意味を持たない大儀、

けれども自分にとっては
それがすべてという大義を
追求するために、

自分自身の安寧や命さえ捧げることも
めずらしくない人種である。」
(「WIRED」2012年)

 

実は、ジョン・マエダが
提言するようなことが、

最近デザインの世界でも
起こり始めています。

スぺキュラティブ・デザイン
(未来のシナリオをデザインし、
違った視点を提示するデザイン)
という概念が注目され、

「問題を解決する」ことから
「問題を提起する」デザインが
提唱され始めているのです。

 

世の中の問題解決をする
デザイナーの時代から、

自分だけが信じる主観的な世界を
世の中に問いかけていく
問題提起型のアーティストの時代に
変わろうとしています。

 

今これが、
答えが見えない時代における、

デザインの潮流になりつつある
という現実を知っておくべきです。

 


 

以上となります。

次回は「アートとサイエンスの関係性」です。

お楽しみに。

 

 

著者名「アート思考
ビジネスと芸術で人々の幸福を高める方法」
著者名「秋元 雄史」
出版社「プレジデント社」