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「体験型」の店舗が生き残る時代へ
では、
「新たな役割を見つけて生き残る店舗」は、
いったいどのようなものなのか?
それは、一言でいえば、
「体験型の店舗」である。
ECサイトがこれから先、
どんなに進歩しても
なかなか出来ないことがある。
それは「リアルの体験」である。
ネット環境の向上、
VR(バーチャルリアリティ)進歩により、
近年はバーチャルながら
「リアルに近い体験」を目指して
様々な技術開発がなされている。
しかし、現時点では
それはあくまでリアルではない、
バーチャルだ。
例えば、
ネットで評判のカレー屋あるとする。
しかし、実際にその店に行かないと、
「食べるという体験」はできない。
焼き立てのパンを食べられるのも、
パン屋だけだ。
ネットで注文できるカレーやパンは、
レトルトのものや冷凍のものに限られる。
いちばんおいしい出来立てのものを食べることは、
実際に行くことでしか体験できないのだ。
同じ店舗でも、飲食店は、
もともと「食べる」という
リアルの体験が前提となっているので、
小売店と比較すると今後も生き残りやすいだろう。
もちろん、もともと競争の激しい業界なので、
店舗ごとに見れば商売の厳しさは変わらないし、
最近では、
「お店で待ったり並んだりするのが面倒だ」
というニーズもあり、
実店舗や調理場から直接料理を届けてくれる
Uber Eatsなどのサービスも出てきている。
加えて、日本を含めて先進国では
人口も確実に減っていくため、
実店舗の減少自体は避けられない。
ただ、私たちが生きているうちに、
世の中から飲食店が消えることは
考えにくいだろう。
サービス業も同様だ。
美容室やマッサージ、スパ、
エンターティメント施設など、
そこに行かなければ
サービスを受けられないものは、
ネットでは代替は難しい。
今後、地方や郊外の
ショッピングモールで残っていくのは、
こうした飲食業とサービス業だけ
かもしれないのである。
今、岐路に立たされているのは、
小売店である。
小売りの店舗は、
飲食サービス業の店舗ほど、
「リアルの体験」を求められていない。
消費者からすればモノが届けばいいので、
現状のECサイトで十分間に合う。
こうした流れを早くに察知し、
すでに店舗展開を大幅に変えている企業もある。
世界的スポーツブランドのナイキだ。
ナイキが2018年11月に
ニューヨーク5番街にオープンした
「ナイキ ハウス オブ イノベーション000」は、
その名の通り、革新的な店舗として
話題を集めている。
ここでは、ただスニーカーやウェアを
販売するだけではない。
そこに「体験」を取り入れているのだ。
ナイキの店舗といえば、
大量のスニーカーが箱に入れられた状態で
陳列された店内風景を想像する人が多いだろう。
だがこのニューヨーク5番街のナイキには、
そのような売り場は存在しない。
スニーカーは一つ一つが
美術品のように並べられており、
それを見ているだけでも
ナイキファンには楽しい店舗体験となる。
言ってみればこの店舗は、
「ショールーム」として機能しているのである。
気になったスニーカーがあれば、
スマートフォンアプリでバーコードや
QRコードを読み取って情報を入手する。
そこに店員がいなくても、
アプリから試着用のスニーカーを
取りう寄せることもできる。
ほかにも、スニーカーの部位ごとに
色をカスタマイズしたり、
専門のスタッフと1対1で相談したりと、
個人に合わせた「体験型サービス」を備えている。
それをデジタルと融合させた形で
実現しているので、
ショッピング体験そのものが、
新しい体験といえるだろう。
一方で購入時の面倒なやり取りは
省略されている。
ナイキのアプリで決済するため、
レジに並ぶ必要がないのだ。
ナイキは、モノ作りだけではなく、
ユーザー体験を高めるためにデジタル投資を
積極的に進めるIT企業ともいえるだろう。
このように、小売りでは今後、
「体験」がキーワードとなる。
「わざわざ行く価値がある」という店舗だけが
生き残る時代になるのである。
もちろん、このような動きに伴って
お店の形も変わっていく。
商品を並べる場所がいらないので、
店舗の広さが小型化することも想定される。
そうした意味では、
地方にも可能性が秘められている。
これだけ物流の発達した時代でも、
地方の港町に行けば、
「この魚が生で食べられるのはここだけ」
ということがある。
その地方にしかない食材やイベントがあれば、
物欲よりも”体験談”が旺盛な消費者が、
わざわざ足を運ぶことも増えていくかもしれない。
たとえば、自分でつかまえた魚を
料理して食べたり、
伝統職人が手作りでつくったものを
何か月も待って買ったりするといったことは
一層増える。
こうした動きは、ネット通販を手掛ける
小さな小売りやメーカーにもチャンスだ。
たとえば百貨店の催し事コーナーでは、
「北海道物産展」などは人気のコンテンツの一つだが、
こうした物産展をはじめ、
都市部に小さなスペースのリアル店舗を
期間限定で出店する
「ポップアップストア」を活用するのだ。
単にネットで全国販売するのではなく、
ときにこうしたリアルの場を用意して、
実際に手に取ったり、
試食出来たりといった
「体験」を提供する。
最近は、こうしたポップアップストアの場所を
提供するIT企業もあり、
小規模の企業でも比較的手軽に
出店できるようになっている。
以上です。
いかがでしたでしょうか。
これからのキーワードは
「体験型」ですね・・。
著書名「2025年、人は「買い物」しなくなる
次の10年を変えるデジタルシェルフの衝撃」
著者名:望月 智之
出版元:(株)クロスメディア パブリッシング