「品揃えのよさ」に価値はない
仮に「店に欲しいものがない」となれば、
消費者にとって店舗はもはや
”用無し”である。
しかし、すべての店舗がある日、
突然に消えることはない。
時代遅れになり客足が減っていく店舗と、
新たな役割を見つけて生き延びていく
店舗に分かれるだろう。
先に「時代遅れになりやすい店舗」
から話をしよう。
時代遅れになりやすいのは、
都市部の百貨店や
地方の大型スーパー、
ショッピングモール、
大型専門店だと考えられる。
こうした大型商業施設は、
20世紀型経済の発展の象徴ともいえるが、
その役目はもう終えつつある。
「週末に百貨店やショッピングモールに
出かけているけれど、
駐車場に車を止めるにも時間がかかるし、
ランチ時はレストランの行列に並ばないといけない。
潰れるなんて想像できないが・・・・」
確かにその通りかもしれない。
しかし、賑わっているのは
一部店舗だけで、
全体としては苦戦を強いられており、
運営企業は経営計画の大きな見直しを
迫られているのだ。
百貨店大手の三越伊勢丹ホールディングスは、
2017年に三越千葉店、三越多摩センター店、
18年3月に伊勢丹松戸店、そして19年9月に
伊勢丹の相模原店と府中店の営業を終了。
さらに20年3月には
新潟三越を閉店することとなった。
郊外型のショッピング施設に
顧客を奪われたことがその原因と
言われているが、
実は郊外型のショッピングモールも、
消費者からすれば時代遅れなのだ。
最近ではチェーン店ばかりで
似たモールも多いため、
消費者から見ると
魅力が薄くなっており、
テナントがなかなか埋まらない
ショッピングモールも
数知れないという状況なのだ。
週末こそ
家族連れでにぎわってはいるが、
平日昼間は
「フロアにいる客数より店員の数のほうが多い」
という光景に出くわすこともあるだろう。
これまで大型商業施設が
消費者に支持されてきた理由は、
「品揃えの良さ」にほかならない。
「そこに行けば、
探しているものが必ずある。」
という安心感は、
消費者にとって
大きなメリットだった。
しかし、今はそれが
メリットになっていない。
わざわざ店舗に行かなくても、
Amazonや楽天などのECサイトで、
あらかたのものは
入手できるようになったからだ。
消費者にとって面倒なことが、
「行くこと」だけなら、
まだ、話は簡単だったかもしれない。
商品ラインナップがいくら豊富でも、
そしてそれがたとえECサイトであっても、
消費者が面倒だと感じていることがある。
それは「商品を選ぶ」ということだ。
たくさんの中から一つの商品を選ぶことも、
実は面倒くさい作業の連続なのである。
価格を比べ、機能を比べて、
店員に意見を求めることもある。
その一連の流れは、
時間もかかるし、頭も使う。
モノによっては数日間、
悩みっぱなしということも
あるかもしれない。
「1ヵ所に多くの商品が集まっている」
ことは、
現代の忙しい消費者にとって
魅力的ではなくなっているのだ。
大型商業施設の苦境は、
人口減少という問題も大きいが、
「たくさんの中から選ぶのが
面倒になってきた。」という
消費者心理の変化にも要因があるだろう。
今回は以上となります。
次回は
”「体験型」の店舗が生き残る時代へ”です。
お楽しみに。
それでは、また。
著書名「2025年、人は「買い物」しなくなる
次の10年を変えるデジタルシェルフの衝撃」
著者名:望月 智之
出版元:(株)クロスメディア パブリッシング